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タップが折れた! 原因と対策【折れたタップの取り方と対処方法】

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タップが折れた! 原因と対策【折れたタップの取り方と対処方法】 機械設計
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当ブログ記事は「タップ折れ」に関する原因と対策、折れてしまったときの対応方法についてまとめています。

こちらのブログ記事では検図の方法やポイントについてまとめています。
→ 検図は設計ミスやトラブルの最後の砦【寸法抜けや忘れを防ぐ具体策】

機械系の設計エンジニアにおすすめの資格を紹介しています。
→ 機械設計エンジニアにおすすめの資格は?【なりたい姿を想像しよう】

タップが折れる原因

「タップハンドルでねじ穴を切るときタップを折ってしまう」
「なんで折れてしまうのだろう。やり方に問題があるのかな?」
「折れたタップを取り出す方法はないかな?」

何回やっても緊張しますよね。

わたしも20代の新人エンジニアの頃、よくタップを折って怒られたものです。

当時は社内も今のように分業が進んでおらず、設計者も自分の設計した設備の加工や組み立てを手伝っており、タップ加工も自分でやっていました。

とくに納期が厳しい時、急いでいる時に折ってしまうんですよね。

M3タップのハンドルを回していると「ペキッ」と力が抜ける嫌な感覚が、、

「あ~またやってしまった、、」
「何とか取れないかな、、」

と右往左往していると、

「あ¨~! またタップ折りやがったな!!」
と先輩の声が、、、

20年近く前の事ですが未だに鮮明に覚えています。

ハンドタップでM2,M3,M4あたりの大きさは気を使いますよね。

特にM2なんてかなり慎重にやっても折れます。

組み立てや加工に携わった人なら必ず経験がある「タップ折れ」ですが、折れるときの状況を冷静にみるとほとんどが下記の4つの原因に集約されます。



下穴の径が小さい、穴深さが浅い

タップの下穴を開けるときに適切な径の穴を開けないと、タップを入れるときに入りにくくなり、余計な負荷がかかって折れてしまいます。

使おうとしていた穴径のドリルを誰かが使っていたり、ドリル先端が丸くなっていたりで、
「0.2mm小さいけどいいかな」
と適当に違う寸法の下穴ドリルを使ってしまうと、タップが折れやすくなります。

M3の下穴ドリルのΦ2.5ドリルなど使用頻度が多いのでヘロヘロになっていたりします。

M2下穴を開ける際などネジ穴自体が小さいので0.1mm下穴径が異なると、影響も大きくなります。

止まり穴にタップ加工をする場合にも注意が必要です。

下穴が浅いとタップ先端が突き当たっていたり、切粉が下に抜けないで溜まるため、タップが折れる原因になります。

タッピングオイルを使っていない

急いでいると「取りに行くのが面倒」などの理由で、そのままタッピング作業を始めてしまってませんか?

旋盤やフライス盤など工作機械でタッピングするときはタッピングオイルを使うのに、なぜかハンドタップでは使わない人もいます。

タッピングオイルを使わないと摺動抵抗が大きくなり、発生した切粉も詰まりやすくなります。

それだけ負荷が大きくなり、タップが折れる原因となります。

ハンドルを回す量が大きい、回転速度が速すぎる、戻し量が少ない

タップハンドルを回すときの回転量にも注意します。

急いでいるときに無意識にやってしまうのがこれですね。

一回の回転角度が大きくなってしまうと、それだけ負荷が大きくなります。

急いでいると回転させる動作が早くなり勢いがつくため、負荷が大きくなったことに手感で気が付きにくくなります。

戻し量についても、急いでいると早く終わらせようとして戻し量が減る傾向が出てしまいます。

切粉が詰まっている

切粉を除去しないで一度にタップ作業を終わらせようとしていると、発生した切粉によって目が詰まってしまいます。

これが抵抗となってタップが折れる原因となります。

アルミや銅など軟らかい材料の場合、タップが切りやすいと油断していると、その軟らかさによって切粉が詰まりやすいので注意が必要です。

止まり穴も下に切粉が落ちないため、穴の奥に切粉が貯まって詰まることで、タップの抵抗が大きくなります。

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【対策】抵抗を体感? タップが折れないようにするには

「対策? 手感で感じるに決まってるだろうが!!」

と若い頃は教育されました。

がっしかし、今の時代にこんな事を言ってはいけません。

しっかりと原因を把握して理論的に考えて対策すればタップが折れる確率は減らせます。

感覚を体で覚えるのもちろん大事ですが、事前にタップが折れる原因を知っておけば、最短で感覚を身に付けることができます。

知識と体験が結びつけばいいのです。

わたしの場合、下記の注意点に気を付けるようになってからM2以外のタップを折ることはほとんど無くなりました。



適切な下穴径、深さにする

これは素直にねじ下穴表に従いましょう。

毎回検索するのも煩わしいのでボール盤の近くに貼っておきましょう。

下穴径は並目か細目、ねじピッチによって変わるので、事前に下穴径を確認して加工します。

止まり穴(通し穴にできない)の場合はできるだけ作業がしやすいように深めにしておくとタップ作業がやりやすくなります。

ねじを切るときも1番、2番のタップで止まり穴の奥までねじを切ろうとしても切れないので、2番タップで突き当たった感触があったら止めて一旦タップを抜きましょう。

そして奥の切粉を除去してから、奥までねじが切れる3番タップに換えましょう。

ハンドルの回転量を適切に! あわてず急がずしっかりと戻しながら

新人の頃に優しい先輩が教えてくれた基本はこちらです。

目安としては180度回転して進めたら90度戻す

折れないように速度もなるべくゆっくり行い、負荷が大きくなったらそれを感じて止めれるくらいの気持ちで進めることも重要です。

まさに “急がば回れ” です。

ここで折れたら対応に何倍も時間がかかることを念頭において、ゆっくりとやりましょう。

タッピングオイルを使う

ハンドタップでも面倒がらずにちゃんとタッピングオイルを使いましょう。

ボール盤の横、旋盤の横に持ち運びできるように小さめの缶に入れて、ブラシを突っ込んでおけば、手軽に使いやすいです。

専用のタッピングオイルが無い場合は、旋盤やフライスで使用している切削オイルで代用可能です(性能は違うかもしれませんが、使わないよりは各段にいいです)。

切粉を除去した際にもう一度塗りなおすと更に効果的です。

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途中で抜いて切粉を除去する

引っかかる感覚や不穏な雰囲気、コキコキという感覚(切粉が切れている)を感じたらそのまま進めずに、いったんタップをすべて戻して抜きましょう。

私は半分くらいまで進んだら毎回必ず一旦抜いて切粉をエアで除去し、再度タッピングオイルを塗って再開しています。

タップ穴にエアを吹き付けるときは切粉が飛んで危ないので、必ずウエスで覆って周囲に飛ばないように気をつけましょう。

防護眼鏡も忘れずに。



スパイラルタップを使う

自分で数回折ってから
「さすがにまずいなあ」
と思い、上記のように原因を考えて注意し始めたのと同時に、折れにくいタップはないかと調べました。

そしてこのスパイラルタップを新しく購入しました。


スパイラルタップは写真の様にスリットが “らせん状” になっています。
(通常のタップはスリットがまっすぐ)

そのため切粉がこの “らせん” に沿って上に上がってくるようになっています。

その性質から一般的には”止まり穴用”らしいのですが、私は通常の通し穴でも使用していました。

通し穴でも落下する切粉は下に落ちるので、溝に沿って上に上がるものと分散されるので、詰まってタップに負荷がかかる確率は減って効果がある実感です。

ちなみに共用工具のタップを折ると怒られるので、このスパイラルタップを自分で購入して個人持ちしました笑。

不思議なもので自分で購入したタップを使うと
「大事に使わねば(自腹だし、、)」
という意識から、かなり慎重になります。

これが一番の対策になっていたかもしれません笑。

ステンレス材の場合は専用タップを使う

ちょっと番外なのですがステンレス材にタップ加工をするときはとくに気を付ける必要があります。

S45Cと比較すると粘っこくて硬い材料なので、普通のタップを使うと折れやすいです。

ステンレス材にタップ加工をするときはステンレス専用タップを使いましょう。

下穴は少し大きめ、目安として0.1mmくらい大き目に開けましょう。

並目M2なら通常S45Cは下穴Φ1.6ですが、Φ1.7ドリルを使うくらいで丁度いいです。

ただし、ステンレス材へのM2タップは「もう折れてもしょうがない」くらいに考えておきましょう。

こちらのブログ記事では検図の方法やポイントについてまとめています。
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“よくある設計ミス”についてまとめです。
→ 機械・設備の設計ミス、失敗事例集【対策を知って未然防止しよう】

折れてしまったときの対処方法 折れたタップの取り方

“折れない対策” はさておき、現時点でタップが折れてしまった、そして
「折れてしまったタップが取り除けない」
となっている場合、どう対処すればいいでしょうか?

折れたタップを取り除く方法についてまとめてみました。



エジェクタピンなどでコツコツと叩いて回す

難易度が高いのですが、先端の細いエジェクタピンなどを折れたタップに添えて、タップを戻す回転方向にコンコンと軽く叩いて回転させる方法です。

ベテランの先輩曰く、
「食いつきが緩い場合はこの取り方で取れるよ」
とのことですが、残念ながら私は成功したことがありません。。

M5あたりならできるかもしれませんが、M3は無理だと思います。

ポンチで叩いて割る、砕く

こちらもポンチやエジェクタピンのような先端の硬い工具を使って、叩いて折れたタップを砕いて壊す方法です。

ネジ穴の出口付近は砕けるのですが、奥の方になると難易度が増します。

折れたタップを取り出す治具を使う

折れたタップを取り出す専用の治具があります。

これは非常に便利ですね。


折れたタップにある3か所のスリットにピンを入れて、この部分をきっかけにして折れたタップを回します。

いくつかのメーカーから発売されていますが色々と調べると
「ピンが折れやすい」
という話があります。

ある程度(TRUSCOなど)のメーカーのものを選んだ方がいいと思います。

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超硬ドリルで折れた部分の上から穴を開ける

タップよりも硬い材料である超硬ドリルを使って、上から穴を開ける方法です。

こちらはフライスやマシニングなどの工作機械を使用して、ドリルが逃げないように(ドリルが折れないように)ワークをしっかりと固定して穴を開ける必要があります(ボール盤はたぶん無理です)。

放電加工で同じ位置に穴加工する

タップを取り出すのではなく放電加工で穴を開ける対処方法です。

自社にて放電加工機を持っていて
「ちょっとコレ放電やってくれませんか?」
と気軽に頼める環境ならお薦めです。

最近の加工現場は加工時間を工数管理していることが主流なので、特に放電やマシニングなどのNC加工機は工数時間管理していると気軽に頼めないですね。

放電は外注に依頼すると高額なので部品を再製作した方が安く済むかもしれません。

このあたりは置かれた状況次第です。

こちらのブログ記事では検図の方法やポイントについてまとめています。
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失敗したタップ穴と同じ位置にねじ加工したい時はヘリサート

  • ねじ加工を失敗してタップを折ってしまい、折れたタップは取り出せた。同じねじ穴を使いたいが穴が変形している。
  • 相手部品の設計状況から同じ位置で同ねじ径にする必要がある。

そんな時は同じ位置にヘリサートタップを加工して、ヘリサートを挿入するといいでしょう。

失敗した加工穴は大きく穴径が広がってしまい当初予定のねじ径の穴加工が難しいです。

ヘリサートであれば大き目のヘリサートタップ加工を行うので当初予定のねじを使うことができます。

ヘリサートについてはこちらにまとめたので参考にしてください。
→ ヘリサートが抜ける原因と対策

無理ならあきらめましょう 隣に別のねじ加工

折れたタップを取り出す専用の治具を購入したけど待ってられない」
という場合、素直にあきらめて別の場所に穴を開けましょう。

もちろん相手部品の通し穴やキャップ逃がしの位置も修正が必要なので、合わせて設計変更、追加工の確認をしましょう。

除去できなかった折れたタップがネジ穴から出ている場合は平面研削盤で研磨して対処します。

見た目にはタップが残ってしまっているので、それでも問題がないか確認しておく必要があります(社内で使う設備なら大丈夫かもしれませんが、社外に出荷、販売するような設備の場合は作り直した方がいいですね)


以上、タップが折れる原因と折れないようにする対策、そして折れたタップを取り除く方法や対処についてまとめました。

参考にしていただけたら幸いです。

最悪は部品を作り直すことですが、何とかそれは避けたいところですね。。

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