当ブログ記事ではヘリサートが浮いてしまう、抜けてしまう不具合の原因と対策をまとめています。
ヘリサートが浮く、抜ける不具合の原因と対策
ヘリサートが抜けてしまう、浮いてしまうことありませんか?
銅やアルミ、樹脂など軟らかい材料の部品に使用するヘリサートですが、設備を調整しているとタップ穴にネジが入らなくなることがあります。
そんな時、タップ穴を見てみると中のヘリサートが出ていたり、変形していることがあります。
そんなヘリサート関連の代表的な不具合や困りごと、注意点についてまとめます。
ちなみに「ヘリサート(英語表記はhelisert)」はツガミコーポレーションの商標で、現在は「Eサート(E-sert)」と呼ばれています。またISOでは「インサート(insert)」と呼ばれています。
呼び方はどれでも問題ありませんのでここではヘリサートで統一しておきます。
まずは代表的な不具合や困りごとについて列挙します。
- ヘリサートが抜けてしまう、浮いてくる
- ヘリサートタップにねじが入らない
- ヘリサート組み込み時にうまくヘリサートが入らない
- ヘリサートを取り出す方法
- ヘリサートの図面指示方法
それぞれの不具合について発生する状況、原因と対策について見ていきましょう。
また未然防止するための注意点についても挙げていきます。
こちらのブログ記事では”よくある設計ミス”についてまとめています。
→ 機械・設備の設計ミス、失敗事例集【対策を知って未然防止しよう】
機械系の設計エンジニアにおすすめの資格を紹介。
→ 機械設計エンジニアにおすすめの資格は?【なりたい姿を想像しよう】
ヘリサートが抜けてしまう 対策は?
もともとは問題が無かったように見えたヘリサートが設備調整時に浮き出てくることがあります。
ヘリサートが浮いてくると締結部品の間に隙間が発生してしまいますよね。
この主な原因は、
「ヘリサートタップとネジ山のかみ合い山の数が少ない」
ためです。
かみ合い山の数が少ないと、ヘリサートの入口部分の数山にネジの締め付け力が集中してしまいます。
この力はヘリサートの針金を持ち上げる方向に働いているので、ヘリサート入口の数山の針金を引き上げてしまうことによって変形して浮き上がってしまい、ネジが入らなくなるのです。
このような不具合の対策としてはこちらの2点です。
- 短いネジを使わない
- ヘリサートを奥まで入れすぎない
つまりねじのネジ山とヘリサートが嚙み合う山の数が多くなるようにします。
ネジとヘリサートが噛み合う山数がなるべく多くなるようにしましょう。
組立の人はほとんど知っているのですが、設計者はヘリサートを入れる方向の指示を図面に入れておきましょう。
通シ穴の場合に裏からヘリサートを入れると適正位置にヘリサートが来ていないことがあります。
図面にヘリサートの長さと入れる方向や深さ指示をした方がいいですね。
エンザート、スクリュースレッドインサートを使う
ヘリサートを使用しない場合の代替え方法として“エンザート”を使用します。
エンザートは入れるときに外周部分で切削しながら挿入されるので、事前にタップ加工する必要がありません(下穴径はヘリサートと異なるので注意)。
挿入時にヘリサートのように専用工具が要らず、amazon(上記リンク)やホームセンターにも売っているので便利ですね。
すり割り付きのもの、ステンレス製のもの、六角レンチで入れられるもの、スクリュースレッドインサートと呼ばれるものもあるので、用途や持っている工具によって選択しましょう。
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→Amazonでお得に買う方法【購入前に使えるか必ずチェックしよう】
ヘリサートと同じく “組立時にやってしまいがちなミス” として「タップ折れ」があります。こちらでまとめていますので参考に。
→ タップが折れた! 原因と対策【折れたタップの取り方と対処方法】
ヘリサートタップにねじが奥まで入らない
設備の組立時にヘリサートねじ穴にねじが奥まで(適正位置)まで入らないことにより、部品が締結できない場合があります。
この不具合の原因としては下記が考えられます。
- ヘリサートタングが取り切れていない
- ヘリサートの組込位置が浅い
- ねじが長すぎる
ヘリサートを組み込む際にはタング部分にヘリサートハンドル(ヘリサート挿入用の治具)の先端を引っかけて、くるくると回転させてヘリサートを入れていき、適正位置になったら逆回転させてタングを折り切ります。
この時にうまくタング部分が分離できずに残ってしまうと、ねじを締めこんだ時にねじ先端と残ったタング部分が干渉してねじが締め込めなくなってしまいます。
またヘリサートの組み込み位置が浅い場合やねじが長すぎて先端部分がタングに引っかかってしまう場合も似たような状況でねじが締め込めない事があります。
対策としてはこちらの対応方法があります。
- ヘリサートタングをしっかりと折り切る
- 適正な深さにヘリサートを組み込む
- 適切な長さのねじに変える
ヘリサートタングの折り切り方法は慣れるまでコツが必要なので練習しましょう。
設備の組み立ての人はヘリサートを入れた後に実際にねじを入れて部品締結に問題が無いか確認するクセをつけておきましょう。
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ヘリサート組み込み時にうまくヘリサートが入らない
ヘリサートを組み込むときにうまく入らない原因については、
- ヘリサートタップ加工がうまくできていない
- ヘリサートハンドル先端にうまく引っかかっていない
といった状況が考えられます。
ヘリサートタップ加工は通常のメートルねじとは異なるタップを使用するので間違えないように気をつけましょう。
機械設計製図便覧やMISUMIの技術情報ページにメートルねじとヘリサートタップのタップドリル、下穴径の一覧があるので、これを見て適切な穴加工をします。
ヘリサートが穴の入り口部分で引っ掛かることで入りにくい場合は、穴の入り口を適度に面取りすると入れやすくなります。
ヘリサートを取り出す方法
既に入れてあるヘリサートを取り出したい場合はどうすればいいでしょうか。
まずヘリサートを顕微鏡で確認します。
一番浅い部分の針金の先端をピンセットなどの先端の細いもので引っかけて持ち上げます。
もしも挿入時に折り切ったタング部分が残っていたり変形している場合は、その変形部分を持ち上げてもいいでしょう。
その状態でラジオペンチなどでしっかりと摘み、徐々に引っ張り上げます。
ヘリサートは一本の針金をスプリング状に丸めたものなので、引っ張るとくるくると解けながら外すことができます。
ヘリサートの図面指示方法
図面への指示方法については通常のメートルねじ表記の下に「ヘリサート長さ○○」「下穴深さ△△」と入れておきます。
これで加工者は該当のヘリサートを入れることがわかります。(一般的にヘリサートタップの加工寸法は図面指示しなくても大丈夫です)
以上、ヘリサートについてまとめてみました。
設計や組み立ての参考になれば幸いです。
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