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設計ミスやトラブルを減らす信頼性設計の5原則

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信頼性設計で設計ミスを減らす 機械設計
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当記事では機械設計の際に信頼性設計の視点を取り入れることで、ミスやトラブルを減らすことを提案しています。

設計ミスやトラブルを減らす信頼性設計の5原則

信頼性設計は機械設計に確率統計的な考え方を取り入れた設計手法です。

この考え方の基本として「信頼性設計の5原則」というものがあります。

この「信頼性設計の5原則」が実際の設計業務に対応する上で念頭に入れておくとよい考え方なので紹介しておきます。

信頼性設計の5原則
  • 過去の経験を生かすこと
  • 部品点数はできるだけ少なくすること
  • 標準品を使用すること
  • 点検、調整、交換をしやすくすること
  • 部品に互換性をもたせること

「機械系設計のための信頼性設計入門」著者 清水茂夫 より引用

信頼性設計は故障の発生の傾向やFMEA、FTAなど具体的な手法があるのですが、今回は基本的な考え方に留めて共有します。(本格的に信頼性工学について勉強したい人は教科書を1冊購入して取り組みましょう)
→ AEラボ Web Site「信頼性工学のおすすめ本」

それでは信頼性設計の5原則について見ていきましょう。

個人の設計者は自分の取り組み姿勢について、組織として考慮するなら「考え方をどのようなルールに落とし込むか」について想像してみましょう。

こちらの2つの記事は設計ミスの事例集、検図の方法やポイントについてまとめています。
→ 機械・設備の設計ミス、失敗事例集【対策を知って未然防止しよう】
→ 検図は設計ミスやトラブルの最後の砦【寸法抜けや忘れを防ぐ具体策】

機械系の設計エンジニアにおすすめの資格を紹介しています。
→ 機械設計エンジニアにおすすめの資格は?【なりたい姿を想像しよう】

過去の経験を生かす

まずは「過去の経験を生かす」という原則です。
設計者個人の視点と設計部門としての組織の視点として見てみます。

設計者はマイ設計ルールで効率化と知識の体系化

自身の過去トラや失敗を忘れないように、記録を残して次に生かしましょう(誰かに公開しなくても自分だけのチェックノートでもいいので記録を付けておきましょう)。

また逆に気が付きにくいのですが「うまくいったこと、トラブルにならなかった検討・調査」も次に再び再利用できるように知識として体系化しておくことをおすすめします。

設計は材料の選定から形状・寸法・熱処理・表面処理など「選択と判断の連続」です。
あらかじめリスト化しておくことによって、使用する手段を絞ることができ、選択と判断に費やす時間を減らします。

しばらく設計業務から離れていた場合でも、設計案件がきたときにスムーズに取り組むことができます。

後述する設計部門内における設計ルールがすでに設定されている場合、そのルールから実運用に即した自分標準に落とし込みましょう。

私の場合は「マイ設計指針リスト」と称して、エクセルファイルに高頻度で使用する部材・資材寸法・比重・熱処理・表面処理をリストアップして特性なども記載しておき、そこから選ぶようにしています。

鉄系ならS45C・SS400、アルミならA5052・A2017、銅ならC1100・C5210といったようによく使う材料をリストアップして対応する熱処理・表面処理もすぐにわかるように一緒に記載しておきます。

比重は材料別に外形寸法を入力すると概算重量が算出できる表をエクセルで準備しておくと、設計中に部品重量がわかるので便利です。

穴加工の寸法精度などは自分のよく使う材料とはめあい寸法もリストアップしておきます。
例えば、ノックピン圧入なら寸法別に下記のような表を作っておくと便利です。

鉄系金属アルミ・銅・樹脂
圧入側K7P7
緩み側E7E7
ノックピン径 Φ2~Φ6使用時の加工寸法

組立作業に立ち合う際に、現物で手感や圧入時のキツさの感覚を得ながら、表の種類と内容をブラッシュアップしていきます。

このような自分の設計ノウハウを見える状態にして、それを増やしていくことによって、設計毎に迷ったり設計製図便覧を見返して調査する手間や時間を減らすことができます。

それに伴い、判断・選定ミスも減らすことができます。

組織における設計ルールやチェックシートの運用

もしも組織的な運用を考慮するなら「社内の設計標準ルール」として設計ルールへ落とし込みます。

ルール化によって部門内で過去に発生した設計ミスの再発を減らし、またルールを限定することによって組立工数や加工工具の消耗も見通し易くなります。

設計標準として部門内ルールにする場合は、「新人設計者の疑問点」と「ベテラン設計者の感覚」の2つの視点を持ってルール化を進めましょう。

新人設計者が設計するときに「何に迷って、調べて、計算しているか」というポイントをリストアップしていきます。
それに対するベテラン設計者の回答や調査した結果をルール化していくとイメージしやすいです。

検図チェックシートのような書式は提出前に設計者自身にて作成しても良いでしょう。

一方で、何でもルール化・チェック項目とするとルールブックやチェックシートが膨大となってしまいます。
大きな会社にありがちですが、ルール作成者が現場を把握しておらず意見交換もせずにルール追加と網羅に執着してしまい、現場や設計者の対応工数が膨大&必要なルールが探せない、といった状況となってしまいがちです。

チェックシートのチェックに一日掛かってしまい納期を過ぎてしまう、ルールブックが厚くて見ない、という状況では、ルールが形骸化するだけで効果が無いどころかマイナス面が大きくなって本末転倒です。

ルールが無くても自然に守られるようにする、チェック項目が無くても自然に項目が満足される。そのためにはどうすればいいかという未然防止の視点で考えることを忘れないようにしましょう。

具体的なボリュームとしては材料選定(表面処理・熱処理含む)標準、加工寸法標準、といった具合にテーマ別にエクセルシート1枚で見渡して活用できる程度に留めるのが実運用に即していると思います。(その他の不明点は「JISに準拠する」でもいいと思います)

過去トラや客先クレーム対策のように工程や設備・製品の種類に帰属するテーマについては、FMEAシートやチェックシートのように共有できる形式にしましょう。

開発DR(デザインレビュー)や進捗ゲート管理のように、設計企画、検図といった進捗ゲート段階別にシートを運用して、複数人でチェックできる体制にしましょう。

部品点数はできるだけ少なくする

部品点数はできるだけ少なくすることでトラブルを減らすことができます。

また部品図の枚数が減れば、検図工数や加工工数も減らすことができ、設計時間とコスト削減に繋がります。

このときの注意点ですが、「複雑な形状にして部品点数を減らすこと」はやめましょう。

とくに3D-CADから設計経験をスタートさせた若手設計者にありがちですが、「3D-CADで描けてしまう形状」が機械加工に適しているわけではありません。

工作機械については「ワーク部材の段取り変え」が発生すると加工工数が大きくなるので、なるべく段取り換えの回数が少なくなるように心掛けましょう。

しっかりと使用する工作機械・加工手順・使用工具をイメージしてコスト削減になることを前提とした上で、部品点数を減らせるか検討しましょう。

標準品を使用する

なるべく標準品を使用することで設計の信頼性を向上することができます。

破壊強度や寿命に対する信頼性も実績から把握することができ、また図面も既に加工経験があるのでトラブルが少なくなることは想像できます。

よく使う形状の部品は社内標準部品リストとして、用途が同じ場合は複数の設計者が選択できるようにしておきましょう。

点検、調整、交換をしやすくする

信頼性工学において保全性は非常に重要なテーマになっています。

点検・調整・交換がしやすい、つまり保全しやすい設備や機械・製品は信頼性が高いと言えます。

設計段階で点検・調整の方法、交換の頻度も把握しておきます。

また保全に使用する工具や測定器、点検表やチェックシートなども設計者が把握しておきます。

レンチやスパナといった組立工具が入らない設計、測定器の測定子がセットできない設計にならないように注意しましょう。

切削刃物や電極、圧入パンチ・ダイ、加工ワイヤのように機械にセットされて使用する消耗工具の交換については、設備稼働に大きく影響します。

消耗工具のセットに時間が掛かったりセット寸法が重要な場合は、別段取りでセットできる構造としたり、専用寸法のゲージを準備してノギス測定を不要とするように、交換時間を短縮する工夫をしましょう。

部品に互換性をもたせる

部品に互換性を持たせることで装置や製品の信頼性を向上させることができます。

例えば自動車においては、シャシーが共通で外観デザインが異なる車種が存在します。
これは互換性のあるシャシー走行性能の信頼性を確保した上で外観デザインを変えることで、異なるユーザにアプローチすることができます。

複数の設備や装置に使用可能な部品とすることで、その部品単体の信頼性を確保しながら、複数装置における信頼性も向上することに繋がります。

信頼性設計の視点から運用方法を考える

以上、信頼性設計の5原則の視点から、実際の設計ルールやその運用について例を挙げながら書きました。

実際のルールや運用方法はそれぞれの製品、業界や社内ルール、取り扱う設備・装置によって異なるので一概には言えませんが、原則を理解しておくことで設計部門内における各設計者の考え方に方向性を示すことができます。

もちろん設計者個人にとっても、自身の判断基準の明確化や設計の方向性(考え方)に一貫性ができることで、他者への説明がスムーズになる効果もあります。

以上、信頼性設計の5原則の視点についてでした(最後に再掲しておきます)。

信頼性設計の5原則
  • 過去の経験を生かすこと
  • 部品点数はできるだけ少なくすること
  • 標準品を使用すること
  • 点検、調整、交換をしやすくすること
  • 部品に互換性をもたせること

「機械系設計のための信頼性設計入門」著者 清水茂夫 より引用

さらに設計FMEA、FTA、保全性など信頼性工学の具体的な手法や統計的なアプローチについて勉強したい人は、こちらのAEラボのブログ記事にて紹介していますのでぜひ参考にしてください。
→ AEラボ Web Site「信頼性工学のおすすめ本」

こちらの2つの記事は設計ミスの事例集、検図の方法やポイントについてまとめています。
→ 機械・設備の設計ミス、失敗事例集【対策を知って未然防止しよう】
→ 検図は設計ミスやトラブルの最後の砦【寸法抜けや忘れを防ぐ具体策】

機械系の設計エンジニアにおすすめの資格を紹介しています。
→ 機械設計エンジニアにおすすめの資格は?【なりたい姿を想像しよう】

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