エンジニアとして長く生き残るために自分の技術やキャリアに対してどのような考えを持てばいいのかについて中堅エンジニアが書いています。
エンジニアとして生き残るために必要なこと
エンジニアがリストラや早期退職募集、はたまたリーマンショックやコロナショックのような未曽有の大不況を乗り越えて人生を充実させるためにはどうすればいいでしょうか。
個々の技術も高度化しており、人と差別化した技術を身に付けること自体が非常に難しい状況でもあります。
一方で、たとえ「人と差別化した技術」を身に付けることができても常に先端技術を追い求める必要性や世の中の多様性(求められる技術が刻一刻と変わっていく)から、エンジニアとして長く生き残ることは非常に難しいのです。
当ブログ記事ではエンジニアとして長く生き残るために必要な事について、一応中堅エンジニアとして現時点まで生き残っている状況を踏まえて書いています。
リストラ、転職、早期退職募集は他人事ではない
ネットニュースを見ていてもよくわかりますが、経営状況が悪くないのに非常に多くの企業でリストラや早期退職募集が進められています。
先日もキリンホールディングスが業績好調にもかかわらず45歳以上の社員を対象に早期退職の募集をしたことが話題になりました。
40代と言えばまだまだバリバリの働き盛りですよねえ。
ひと昔前はリストラ年齢というと55歳、50歳と考えられていましたが、最近の早期希望退職は45歳、はたまた40歳で募集をかけるところまで出ています。
大手銀行も話題になりましたが製造業も多いですね。
かくゆう中年サラリーマンエンジニアであるわたしも他人事ではなく戦々恐々としています。
リーマンショックやコロナショックなど、数年に一度の世界的な景気リセッションもあるので業績が悪くなった場合は会社の生き残りを掛けて仕方ないかもしれません。
一方でキリンホールディングスのように業績が好調時にもかかわらず人員再編やリバランス調整を実施する会社も増えています。
東京商工リサーチによると2019年の1月~9月の上場企業の合計で1万人以上の早期退職募集者数であり、2018年の2.5倍に上るとのこと。
1万人ですよ!
早期退職者が1万人!
1年で1万人が全員再就職できるわけないですよね。。。ショックです。
厳しい世の中です。。
そして実際に早期希望退職を募集している、過去に募集した会社を見るとかつて覇権を極めた名だたる会社が多いこと、多いこと。。
この様な状況であると、いつ自分がその状況になるのかは運に左右されているとしか思えません。
現在の若手エンジニアにとって、
- オレは若いから関係ない
- 私には特化した技術があるから大丈夫
- 私は安定企業に居るから心配ない
これらの考えは非常に危険です。
現在20代の人でも10年後、20年後はもちろん若くないですし、現時点で特化した技術を持っていてもその技術が進歩するスピードは速いです。
その技術、もしかして不要な技術になっている可能性すらあります。
現時点で安定企業でも10年後はおろか5年後さえもわからない世界です。
リストラや早期退職募集など、もしくは自分からの転職についても長い会社員人生では「充分に起こりうるイベント」なのです。
近年の早期退職募集した企業と人数
ここ数年で実際にニュースになった早期退職募集やリストラについて、日経新聞の見出し記事から集めてみました。
名だたる企業が軒を連ねていることがわかります。
- 東芝(2019年) 約1060人募集、子会社で400人程度の早期退職募集
2015年にも1000人の募集 - 富士通(2019年) 2850人を削減
- カシオ(2019年) 700人
- パイオニア 経営再建中、全世界で3000人の発表があり募集継続
- JDI(ジャパンディスプレイ、2018年) 1200人を募集
- NEC(2018年) 国内で3000人の募集に2170人が応募
- ニコン(2017年) 約1000人の応募予定に1143人の応募
- ケーヒン(2015年) 400人の募集
- シャープ(2015年経営再建時) 3500人募集に対し3234人の応募
- ソニー(2015年) 1500人の募集
- ルネサス(2015年) 1800人の募集に1725人の応募
- 横川電機(2015年) 1105人の応募
私が就職活動していた学生時代、これらの企業に就職が決まった友人に、
「いいなあ、一生安泰だよな! うらやましい~」
と話していたものです。
という事は対象となっているのは自分よりも遥かに優秀で頭も良い人であることがわかります。
その時代のトップ企業でも数年後はどうなるか誰にもわからない状況です。
また募集人数にも驚きです。
割増退職金の条件が良ければ、きっとフットワークの軽い人から応募→転職となるのでしょう。
今あなたの会社で早期退職の応募が始まったら、果たしてすぐに転職に向けて動き出すことができるでしょうか?
企業はリストラによって若返りをしたい この傾向は続く
会社の経営が行き詰まったことにより、経営再建の必要性に追い込まれてリストラを開始するケースはわかりやすいですよね。
一方で黒字企業において早期退職募集やリストラ、人員整理をする理由はなぜでしょうか。
その理由は2つあります。
一つ目は国が推し進めている
「雇用延長(労働年齢の高齢化)による労働年齢の高齢化」
に対して、企業側が備えているためです。
もともと60歳であった定年は近い将来、65歳となるでしょう。
また再雇用は現在65歳までですが、これもおそらく70歳へと引き上げられると思います。
高齢化社会においては労働年齢を上げて就労可能な人口を確保することによって、年金受給を繰り上げする人数を増やすことができます。
目先の生活費が稼ぐことができれば年金受給開始を遅らせた方が、個人としての年金受給額は増えますからね。
一方で年金基金全体としては支払いを「可能な限り後ろ倒しする」ことによって、総支払額を目減りさせることができます。
例えば受給開始を75歳にすると、もらえる当人の受給額は増えますが、一方で受給前に亡くなる人が居るので、年金機構が支払う総額は減ります。
( 受給開始年齢を引き上げるほど、亡くなって年金がもらえなくなる人数は増えます)
このように高齢化に備えて年金基金が年金支払い開始を引き上げるために、労働年齢を上げることによって、会社における社員の平均年齢が高齢化します。
そのような状況に対して企業側が今から準備するためには、
「今のうちに可能な限り40~60歳の人員を減らしておく」
ことが必要であることがわかります。
黒字企業においても、将来の社内平均年齢の高齢年齢化を少しでも緩和するために、今から高齢予備軍の人数を減らしておきたいと考えているのです。
このような状況から
「現在の自分の会社の経営状況が良いのでリストラなどしないだろう」
と油断するのは危険であることがわかります。
そしてこの状況はこの先も続くことが予想できます。
企業は「ぶら下がりおじさん」を減らしたい
企業側がリストラを進めたいもう一つの理由は
「何となく高い給料をもらっている中高年を減らしたい」
ためです。
もちろんバリバリ働く中年世代は事業推進、若手育成のためにも会社にとって必要です。
一方で、この年代の特徴として役職に就ける見込みがないことが既に見えてしまったり、体力的にしんどい、介護問題があるなど、理由はともあれ仕事に対してモチベーションが上がらない人、仕事に全力投球できない事情がある人の割合が多いのも事実です。
人生なので、人それぞれ環境変化があり、仕事に集中できるタイミングかどうかは必ず変動がありますが、40~50代はことさらこのような苦労が多いものです。
一方でこの年代特有の先が見えてしまったためにモチベーションの上がらないおじさん、つまり
「会社にぶら下がっているおじさん」
がいることも事実。
また最近ではコロナによるテレワーク推進などによって、必要のない人が炙り出されるような状況にもなっています。
「オレは若いころは身を粉にして、自分を犠牲にして、会社に貢献したんだぞ!」
という人もいますよね。
実際に素晴らしい貢献をされたミドル、シニア世代ももちろんたくさんいます。
しかし残念ですが、
「それでは定年までのんびりしていいですよ」
というような優しい、余裕のある会社は少ないことでしょう。
成果主義も多くの企業で導入されており、常に結果を出すために走り続けていくことを求められる中で、管理職になれなかった中年世代が若手と同じようにプレーヤー的な活動量を維持することは難しいです。
そうなると中年でもエンジニアとして生き残るために、アウトプットを出すためには武器となるスキル、知識、経験、エンジニアをまとめる能力、プロジェクト推進力(技術総監的な能力)などによる差別化が重要となります。
充実したエンジニア人生のために必要なこと
将来も同じ会社に所属しているか、転職しているか、独立しているか、どちらであったとしても
「エンジニアとして充実した人生にしたい」
ですよね。
そのために必要なのはこの3つを持つことです。
エンジニアとしての能力と自覚、自信です。
エンジニアとしての能力と自覚、自信を持つこと
もちろんエンジニアとしての技術的な能力に加えて、それを周囲に説明する能力や業務を推進していくというようなビジネスマンとしての能力も兼ね備えている必要があります。
技術力は周囲と差別化できていると更に良いですよね。
ニッチな分野や人より抜き出た能力の高さで差別化できていると有利です。
一方で経験の広さや語学力、調整力のようなビジネスマンとしての能力の高さによって差別化する戦略もアリです。
いま20代、30代の皆さんは現在の仕事の延長線で努力すればその展望が見えていますか?
もしも近い将来のなりたい自分を思い描いたときに、 それが現在の自分の業務内容、技術分野の延長線上に無い、という場合は軌道変更つまり転職が必要です。
中年サラリーマンエンジニアである私も同じです。
「自分はプロである。自分はエンジニアである」
という自信を維持したいと思っています。
(30代中盤の頃にそのような40歳になりたいと考えて技術士資格を取得しました)
そのためには他の人と差別化した技術、知識、経験を保持し、それを常に更新していく必要があり、それを意識して仕事をしています。
現役時代にそういったエンジニアとしての自覚を意識しながら業務遂行していると、自然にそういった自信を身に付けることができます。
ちなみに技術士の果たすべき責務の一つに「自己研鑽による資質向上」というものがあります。
技術士には3つの義務と2つの責務(3義務2責務) というを果たすべき命題があり、これを意識することでエンジニアとしての自信は自ずと維持することができます。
「転職が有利になる」ポイントも実は同じです
エンジニアが転職する際にこの3つを持っていれば有利に転職活動を進めることができます。
同じですが、重要なので書きます。この3つです。
- 能力
- 自覚
- 自信
つまり、
転職が有利になること = 充実したエンジニア人生に必要なこと
なのです。
エンジニアとしての能力が転職における市場価値を決める
自分がエンジニアとして「どんな能力を持っているか」によって転職市場における自分の価値が決まることはわかると思います。
自分が何のエンジニアで、どんな経験があるか、何ができるか、何を知っているか、、、
エンジニアとしての自分の能力を棚卸してみましょう。
それが転職先の会社での貢献となるはずです。
つまり転職活動時にアピールできるポイントです。
エンジニアとしての能力が高い、対応範囲が広いということは、転職先での貢献度が高い、貢献範囲が広いという意味です。
エンジニアとしての自覚は成長につながる
自分に「エンジニアとしての自覚」があれば、どんなエンジニアでありたいか、なりたいか、という気持ちが明確になります。
たとえ現時点で明確にまでは至っていなくても、自分のエンジニア像がぼんやりとあれば、先の方向性が定まっていきます。
自分がなりたいエンジニア像にあれば、それに近づくために成長意欲が自然に生まれます。
何を勉強すればいいのか、どんな能力を補えばいいのかなど、自覚を持つことがさらに自分のエンジニアとしての能力を伸ばす活動を呼ぶのです。
自信のあるエンジニアの言葉には心を動かす説得力がある
エンジニアにとって自信は大変重要です。
自信がある、ないという気持ちは必ず言動や言葉の強弱、態度、しぐさに現れ、それは必ず相手に伝わります。
エンジニアとしてどんなに優れた能力を持っていても、それを説明するとき、結果を示すときに
「自信の無さ」
が感じられたら、説得力は著しく低下します。
特に転職活動においてエンジニアとしての自信が相手に伝わるように心掛ければ有利に働きます。
面接で自信の無さそうなエンジニアを採用しますか?
つまりそういうことです。
今から動けば3つとも手に入る
「エンジニアとしての能力、 自覚と自信」は明日からすぐに身に付けることは難しいですが、計画を立てて意識的に行動をしていれば、実は数年で身に付けることができるのです。
何歳だっていいんです。
意識して特定の分野を集中して勉強すれば1~3年で手に入れることができます。
技術士だってストレート合格なら3年かかりません。
英語だって1年集中して勉強すれば話せるようになるはず。
プログラミングだって機械設計だって仕事で3年もしがみ付いて業務を担当すれば、その道で食っていけます。
そんな活動をしていれば能力も自覚も自信も付いてきます。
自分のエンジニア人生をさらに充実させるために何が必要なのか考え、すぐに行動しましょう。
【おまけ】経済的に独立していることの重要性
エンジニアとして充実した人生にするために
「エンジニアとしての能力、 自覚と自信 をもつこと」
が重要としました。
一方でもう少し広義にしてサラリーマンとして考えた時に必要なのが
「経済的に独立していること(会社や誰かに依存し過ぎない)」
です。
もちろんサラリーマンであることは会社から給料をもらっているわけで、ある意味依存しているともいえます。
しかしそれは、あくまで労働の対価や貢献に対する報酬であって、依存している→ぶら下がって給料をもらっている状態ではいけません。
自分の「エンジニアとしてのありたい姿」に対して、経済的な面において会社や依頼主に完全に依存し過ぎている場合、会社や依頼主の要求に従うしか選択肢はありません。
もしも会社員の人が経済的に完全に依存した生活をしている場合、会社から望まない配置転換や早期退職を打診された時点で即、路頭に迷う事になってしまいます。
フリーランスの人も特定の依頼主の業務に経済的に依存している場合、その契約が終わった時点で収入がゼロになってしまいます。
エンジニアとして「 差別化された能力 」が重要であることはもちろんですが、経済的に担保された状態にないと「そんなこと言ってられるない、言う事を聞くしかない」という状況に追い込まれてしまうのも事実なのです。
副業でも運用でも節約でもいいのですが、「来月から給料出せません」と言われたときに、次の会社が決まる期間を余裕持って暮らせるくらいの蓄えをもっておきましょう。
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